2018年12月23日日曜日

事業立ち上げと撤退の狭間


つい先日、メルカリの英国事業撤退が話題になりました。欧州の中古市場の大きさに目を付けたのは良かったのですが、3年で3000ポンドという売上にしても、英国にいてメルカリの広告を見る機会が皆無だったことから見ても、広報に出てこない諸々の事情があったのだと思います。それにしても3年できっちり撤退判断をできるのは、ある意味立派。

このメルカリの件を見てちょっと思い出したのですが、以前ある経営者がこんなことを言ってました。
「新たなサービスをローンチし、それが当初の仮説に反して全然収益化しない事が判明すると、9割の会社が売り方や価格設定の問題と捉えて試行錯誤するが、恐らく正しくない。ニーズが無い、若しくは収益化が困難なレベルで乏しいのが正解なのだが、早い段階でその本質に踏み込めない」

これは非常に頷く話で、大体は企画段階でExitプランを立てているのですが、製品担当者あるいは経営者の思いで、ウヤムヤになったり、決断が後ズレになるというのはこれまで何度も目にしてきました。それだけ、撤退戦というのは色々な思惑や責任問題が入りこんで困難を極める問題です。本来的には即撤退か、「半年間」とか期限を設けてニーズを見極めて撤退が正しいのだと思います。価格設定や売り方の問題ならニーズ調査を詳細にすれば必ず浮き彫りになるはずですから。でも上層部がトップダウンで英断しない限り、実態としてできているケースを見たことはほとんどありません。

特に中途半端に顧客が付いてしまっていると判断が更に後ズレになりがちです。ただ前職の経験では、既に顧客が付いていたあるサービスの提供を止めた時は、営業が「売上が下がる」と反対の大合唱をしていたよりは影響が少なく(顧客へは代替サービスへの移管を提案したので、反対はほぼ皆無)、却って利益率は上がったという身も蓋も無い現実を見たりもしましたが。

またこの辺りの撤退が困難になっている理由として、上記のような思いではなく、資本関係が絡んでいるケースもあります。私も知っている英国のある中小企業は資本構成が創業時の10人弱の株主にほぼ均等に配分されています。その中の何人かは現在でも事業責任者に就いていますが、明らかに赤字事業で黒字の見込みも立っていないのに、株主であるが故に、なかなか赤字事業のクローズに同意してくれない株主もいるそうです。そのため黒字事業が長年赤字を補てんする関係がダラダラと続いているとか。それでも株主であるが故になかなか次の投資判断ができないというところは資本政策の影響の大きさをつくづく考えさせられます。資本政策の重要性は磯崎哲也氏も繰り返し著作で言及されています。

名著『失敗の本質』でも撤退戦の難しさが詳細に研究されていますが、昔も今も、戦争でもビジネスでも変わらないのは、撤退する時のステークホルダーの利害関係は、事業を開始する時よりずっと複雑になっているということ。事業開始時と撤退を議論する時はステークホルダーが既に退職していたり構成も変わっています。そうすると事業開始時の背景を再度説明するなど複雑なコミュニケーションも必要になります。嫌な話ですが、事業を開始する時点で撤退のシナリオはしっかり考えておく必要があります。勿論、その撤退プランが実現しないのが一番良いのですが。

皆様、良い新年をお迎えください。

Lille, France

2018年12月1日土曜日

パートナーを探す(2)代理店開拓

海外の未知のマーケットで自社製品(特にB2B商材)がターゲットとするマーケットにリーチするには、代理店の検討は避けて通れません。元々代理店がその国に存在するなら話は格段に楽ですが、ゼロからの開拓だとある程度のリードタイムは覚悟する必要が出てきます。代理店を使うメリットとしては
  • 顧客網を既に持っている
  • エンドユーザとの間の言語、通貨、契約面の壁を吸収してくれる
  • 自分たちの代わりに製品を宣伝マーケティングして認知度を広めてくれる

などなど色々あるかと思いますが、後発でその国に参入するとなると、他の競合製品を検討したことが過去にあるケースが多いです。そのため競合をおさえて取り扱ってくれないと意味が無いので、「何がユニークなポイントか」を突き詰めて、且つシンプルな言葉で表現できるようにしておく必要があります。私の場合はそのような練り上げた資料を作成して、コンタクトしました。製品として特許を持っているとか、圧倒的な差別化要素を持っていると話の進みは格段に良くなります。差別化要素は既に海外進出前に持っていると思いますので、それをシンプルに表現しましょう(逆に差別化要素が弱い場合はそもそも海外進出すべきかどうかという議論になります)。

コンタクトリストは割と地味に検索などでリストアップして、代表電話からというアプローチを当初取っていました。これはキーパーソンに到達するまで最低2-3か月のリードタイムが必要で、且つヒット率も低い根気のいる作業になります。コンタクトはしたものの、会話するにしたがって戦略が一致しなかったり、マーケットが一致しなかったので合わないケースも勿論多々あります。そのためにもある程度量をこなすことが必要です。

ただ後から知ったのですが、英国では電話はスパムが非常に多く、電話が取られる確率は非常に低いそうです。逆に昔ながらのメールアプローチを得意とする企業も存在します(メール内容は相当に練り上げます)。 またイベントのブースにはキーパーソンがいるケースも多く、話も進みやすいので、電話でのコールドコンタクトは(確率はゼロではないですが)あまり多くを期待しない方が良いというのがこれまで得た教訓です。また初期コンタクトを業務委託するにしても、その委託先が元々ターゲットになるパートナー候補とコネを持っていた方が当然ながら話が進むスピードも確度が全く違うので、自分がターゲットとしている企業へのコネもベンダー選定のポイントになります。

また製品だけでなく、代理店にとってはどのようなメリットが得られるかもポイントになるため、パートナープログラムのようなパートナーにとってのメリットをまとめた資料は用意しておくようにしましょう。とは言え、パートナーにとってのメリットはその製品を取り扱うことによる売上やブランド力向上なので、一にも二にも製品力とそれを見せるメッセージングが不可欠なのですが。

交渉が進むと当然、契約の話も出てくるので、代理店契約のひな形は現地の言語(最低でも英語)で前もって用意しておく必要があります。価格表なども要求される確率が高いので、現地語現地通貨で早めに用意しておくことが無難です。

ただ、(現金な話ですが)代理店交渉はこちらから顧客候補を紹介するとあっという間に進みます。鶏と卵ではないですが、100%代理店開拓に注力するのではなく、ある程度エンドユーザを開拓しておいた方が、顧客要望に関する知見を貯めるという意味でも有効と思います。

Regent Street

2018年11月18日日曜日

パートナーを探す(1)業務委託


「知見が乏しい海外のマーケットで事業を拡大するにはパートナーの存在が欠かせない」とよく言われますが、「パートナー」にも色々な種類があります。緩やかな技術パートナー(アライアンス)、販売代理店、OEM事業者等々。広義では拠点の一部業務の委託先も「パートナー」と呼ぶこともあります。まずは業務委託先探しに関しての私の経験をお話します。私の場合は以下の業務に関して、内製と委託を組み合わせながら事業運営しています(いました)。

1.       会計・税務
2.       労務
3.       営業マーケティング

12に関しては、英国で日本企業向けのサービスを提供しているところに委託しています。本来的には英国ローカルの事業者に頼んだ方が安く済むのかもしれませんが、この2つはかなり込み入った話になるケースもあり、その場合のディテールを会話上で日本語が望ましいと判断しました。特にこの2つは本社スタッフ部門の方が私より会話する機会が多いのですが、英国ビジネスの事情に精通して、英語もディテールを会話できるレベルのスタッフを抱えている会社は一般的には相当少ないという現実的な問題を考慮しても、日本人の委託先を探すのが妥当ではないかと思います。

ただ話を聞くと、割と悪質な日本企業ターゲットの事業者というのも、残念ながら存在するようなので、信用できる方からの紹介が良いかと思います。私の場合は、現地ビジネスに根を下ろしている日本人経営者の方に直接教えてもらいました。

3に関しては、リスクヘッジのため当初は業務委託先を探して委託しました。これもネットなどで探すのではなく、英国大使館や英国政府機関などから伝手を辿って行き着いた数社を入札して決めました。1年ほど委託してみて、これにはメリットデメリットがあったと思っています。簡単に言うと、

メリット
  • 人材採用コスト(時間を含めて)を下げられた
  • 委託事業者の持つ現地企業とのコネを利用できた

デメリット
  • 長期的には社員を採用するより割高
  • 営業活動を通じたノウハウを内部に蓄積するのが厳しかった
  • 委託業者が自社製品の知識を持っているわけではなく、正しい価値訴求ができるようになるまで時間が掛かった
  • KPI設定を誤ると委託先が迷走する(社員のように考えてくれることは期待しない方が良い)
  • 委託業者の中でキーマンが辞めた組織混乱の影響をこちらも受けてしまった(これは採用した社員が辞めても同じかとは思いますが…)


特にノウハウの部分が非常に大事で、外部の事業者は(契約切られるのを恐れてか)蓄積したノウハウの詳細を開示・文書化するのを渋る傾向があります。例えば、コンタクト数をこなすテレマーケティングなどを安く外注して、クロージングは自社社員でといった役割分担でノウハウも蓄積した方が有効ではないかと、今では思っています。KPI設定は私も試行錯誤でしたので、慎重に考え、シンプルな数値に設計しましょう。

Claremont Landscape Garden

2018年11月10日土曜日

リージョン間の交流


今回は少し余談です。英国での事業立ち上げのために赴任してから、これまで成功した決断と、それ以上に失敗した決断も無数にあったのですが、最も成功したと思っているのが、欧州事業を北米事業の(バーチャルで)下に付けるという決断でした。これによって何が起きたかというと、組織的にワンチームになったため、営業・エンジニアの交流が恐ろしいぐらいのスピードで進みだしました。お互い英語ネイティブなので、日本‐その他リージョンでの交流のような、ともすれば言語の壁から来る、コミュニケーションの壁もありません。チームの仲間が増えることは感情面でもチームにプラスになるので、リージョン間での組織的・心理的な壁が無くなることで、「どうすればサポートできるか」を皆考えるようにマインドセットも変わってきました。私をいちいち通さなくても日々どんどん議論が進んでゆくので、チーム力も勝手に上がって行きます。これはかなり驚きであると伴に嬉しい誤算でした。

丁度英国社員が入社してほどなく、チームアップのための「欧米の」オールハンズミーティングをやったのですが、これがまたタイミングよく情報交換が更に深まったため、大きくプラスに働きました。英米は言語もビジネスの考え方も近いので、交流によるチーム力向上を非常に楽しく見守ることができるようになりました。営業もエンジニアも、ユースケースや技術情報の交換により、思いの外、早期に立ち上がってくれたため、これは絶対的にお勧めできます。例えば、イギリスの優れた要素技術を持つベンチャーをアメリカ側に紹介したりといったことも、日々のコミュニケーションの中で気軽に出てきます。

リージョン同士の再編は大きい組織では簡単ではないですが、情報交流を促進するための仕組作りは、どのような規模の組織でもできます。SkypeSlackなど、コミュニケーションを促進するツールには今日事欠きません。最終的にはそれでビジネスが前進することが一番だと思います。企業が成長するためには製品力も不可欠ですが、人のダイナミズムがこれだけ影響するというのを目の当たりにしたのは、人生の中でも大きな喜びでした。(実はこのリージョンをくっつける重大な決断を30秒で決めたということはさておき…)

Winkworth Arboretum

2018年10月27日土曜日

拠点の登記

ハロウィンが近いので、カボチャを買ってきて作ってみました。結局半日作業でしたがが、カボチャが崩れないように顔を掘るのは意外と難しいものですね。


イギリスはアメリカほどではありませんが、ハロウィンカボチャの展示をやっているところがあり、Bodenham Arboretumはハロウィンカボチャの力作が園内に飾られています。私のような素人の作品とは次元が違います。



さて前回まで人材採用の話に回数を割き過ぎて、その前に必要な拠点登記の件を書き忘れておりました。事業内容に合うビザを決め、初期の事業戦略もそれに合った拠点の設立作業に入ります。

イギリスの場合は拠点の登記はそれほど難しい業務では無いので外注しても安価で済みました。私の場合は、普段お願いしている公認会計士に依頼しました。必要な書類のリストが出てくるので、その書類を揃えるだけです。イギリスの場合は、本社の役員が変わるたびに届け出なければいけないので、私の会社の場合は、株主総会で取締役が固まった時点で急いで書類の準備と登記を進めました。現在の欧米ではどの国も投資を奨励するため、法人登記そのものは比較的やりやすいと思います。現地資本の比率XX%といった縛りがある国だと資本政策含めて法人形態を色々どうするか考えなければいけませんが、その点ではアメリカやイギリス、欧州大陸の国々はかなり作りやすくなっているようです。日本本社のメガバンクでは、海外の各国の資本規制などを調べているので、主要取引銀行からそのようなレポートを取り寄せると良いかと思います。またジェトロもウェブサイトで情報公開しています。

どちらかというと登記より時間を割かなければいけないのは、登記の前段階として、法人形態を含めたビジネスプランを固めるところです。事業計画作成のところでも触れましたが、3-5年ぐらいを目安に、
  1. どのような事業をその国で行うのか
  2. ざっくりとした売上、費用、現地採用人数などの全体感
  3. その結果としてどのような法人形態が望ましいか、将来変更する可能性があるか

などは、その国によって登記の際に提出を求められるか求められないか温度差はありますが、社内での説明との整合性は取っておく必要があります。法人形態が支店や駐在員事務所の場合は、事業プランに応じてその法人の役割に関して、その後にもレビューが必要なケースが出てくるでしょう。3-5年先の中期的な計画をプランニングする際には、その拠点をどのように発展させてくるかという話の中で、拠点の株式会社化という話は出てくるかと思います。当然ながら駐在員のビザの更新にも影響してくることにもなるので、時間を割いてしっかりしたプランを作ることを後々のためにもお勧めします。

またその拠点の事業内容として、登記当初から営業活動を行うのか、マーケティング拠点にするのか、研究開発拠点にするのかなど、目的によって売上の立て方、翻って税務関係に影響してくるので、事業内容および、事業内容の転換を想定している場合はその想定時期なども登記当初から考慮しておかなければいけない課題となります。

拠点の登記と必ずしも同期する必要はありませんが、現地の法人口座を作ることやVAT事業者として登録するところは意外と時間が掛かるので早めに着手しましょう。拠点の確定申告や、従業員への給与や社会保障の支払い部分では必ず必要になってきます。イギリスでは社会保障費関連の支払いは法人口座から自動引き落とし(ダイレクトデビット)が一般的です。特にローカルの銀行では書類審査に時間が掛かることも多いと聞きます。もし本社の取引先銀行が、対象国に支店をオープンしている場合は、その銀行に開設した方がかなり省力化されると思います。VAT登録も法人の確定申告の際には必要になるので、対象国の年度末がいつかを意識して、早めに着手しましょう。

2018年10月12日金曜日

現地スタッフを採用する(4)


もうこの採用ネタ終わりにするつもりでしたが、前回までの3回分より先に考えるべき最も重要なことを書き忘れていたので、補足します。人材戦略・組織設計のお話です。
どのような事業戦略を立て、その実現のためにどのような組織が必要かは事業戦略の中の作るべきアイテムとして、以前触れました。
その際に大事なのが各機能別に誰をトップにするかを事前にある程度考えておくことです。具体的には例え小さい拠点でも、組織階層図を書いた方が、最初は人がいないポジションは「TBD」でも、自分を含めてどのような位置づけになるか明確になります。できれば3年後の組織図を書いて、どの人材をいつ採用するかも色分けしてビジュアル化することをお勧めします。どのような人材を必要としているか、数年後にどのような組織に発展させて行きたいか、戦略とそれに伴うProfit&Lossをまとめるのも楽になり、社内を説得する材料にもなります。特に拠点の立上げ期は人件費がほぼ大半を占めますので、人の採用と配置が決定的に重要になります。
可能なら、自分で機能別戦略を立て、マネジメントできる人材を最初に採用できるのが最善です。且つ、その人が立上げ期の会社や小規模の「自分で何でもやらなければいけない環境」での職務経験を持っている人がベストです。本来的にはそれで日本企業の(ある意味特殊な)カルチャーを理解していれば最高ですが、そこを吸収するのは駐在員の役割なので、最重要な要件ではありません。その人材に、最初はプレイングマネージャーとして動いてもらいつつ、部下として働ける人を引っ張ってきてもらいチームを作って自律的に動いてくれた方が継続的に成長する組織を作って行くことができます。特に営業職は、ヘッドカウントと売上がある程度比例するため、どのレベル(どれぐらいターゲット業界の顧客を持っているか、どれぐらい顧客のシニアレベル(C-Level)と会話できるか)の人をどれぐらい採用して、どのように動かして行くか(営業戦略)は、数年レベルで設計することが非常に重要になってきます。
実際に私は営業組織と技術組織の立上げのために、そのマネジメントができる人を採用しました。自律的に動けるシニアな人材を取ることによって、私自身は職を失うことになるかもしれませんが、組織の持続的な発展のためにはその方が良いと考え、現在もその方向性が機能しているので良かったと思っています。どんな組織になるか楽しみに思いながら日々生きています。
ちなみに下記の本は、どちらかというと大手企業向けですが、グローバルで人材戦略を考える際に参考になる本ですので紹介しておきます。





High Beeches

2018年10月6日土曜日

現地スタッフを採用する(3)


私の場合、最終面接も終わってめでたく第一号現地社員採用となったところで慌てて作って大混乱だったのが、オファーレターを含む提示書類一式でした。イギリスの場合、以下の一式の準備をしました。
1.      オファーレター
2.      雇用契約書
3.      コミッション・ボーナスの計算式に関するレター(雇用契約書の補足的な内容)
4.      個人情報の取扱いに関する同意書(Privacy Notice
5.      Staff Handbook(披雇用者としての行動規範)
6.      Job Description(披雇用者の職務定義)
5は別として、そもそも会社としてその国の現地社員を採用する段では、全てが初めてのことだと思います。人事・労務関連に詳しい現地の弁護士やコンサルタントは、採用活動前に必ず見つけておきましょう。後から探してオファーを出すのに時間ばかり掛かると、折角見つけた人材に逃げられるリスクが出てきます。当然のことながら、最終面接まで残るような優秀な人は、雇用者側がきちんと書類含めて受け入れる体制を持っているかも、判断材料として見ていると考えるのが自然です。
1から5の書類は現地の習慣的に大体テンプレートがあって、それに自社のルールを適用して修正するのが速いと思います。特に時間が掛かるのが、ボリュームが大きい245ですが、2は候補者との交渉の過程で手を入れるのに時間が掛かるケースもあります。採用を始める時点で、これらのテンプレートは作成に着手するのが妥当です。
私の場合は、これらを最終面接近くになって着手したので、人事や法務に相当迷惑を掛ける羽目になりました。結局、そのオファーを出そうとした第一号の人は、条件面で散々ゴネられ、最終的にオファーを蹴られたのですが、ゴネられている間に、時間の掛かる45を仕上げる時間の余裕が生まれ、次の候補者にはスムーズにオファーを提示できたというケガの功名もありました。しかも、その最初にゴネた人は、後日談で履歴書をかなり盛っていて、採用しないで良かったというオチも付いた次第です。
英国は日本と労務関係の制度・習慣は近いとは思いますが、それでも細部には違いがあります。例えば、
  • ロンドンは不動産が高過ぎて住めないため、シェアードオフィスが日本と比べてかなり普及しています。普段は自宅勤務、連絡手段は電話やスカイプのようなウェブ会議システム、どうしてもFaceToFaceが必要な場合だけロンドンに出てくるという人が大半なので、面接時に「週に何回出勤必要か?」と聞かれた時は日本の感覚との違いに驚きました。
  • 通勤に掛かる費用も給料込みという考え方なので、自腹が基本。逆に通勤費を支給することをメリットとしてアピールしている日系企業もあります
  • 定期昇給という考え方が無く、給料(基本給)が上がるのは、Job Descriptionに項目が追加された時(つまりやることが増えた時・レベルアップした時)だけという考え方

以上のように、細かいところは現地のプロでないと事前に知ることは困難なので、人材エージェントもある程度情報を持っていますが、労務系のプロは非常に重宝します。
めでたく雇用契約書にサインをもらい、入社日も調整できたら、労務回りのところを色々準備する必要が出てきます。現地の規制に合わせた給与計算などの準備は、採用が決まった時点で財務などとの調整が必要ですが、現地の給与計算もほぼ全てのケースで、会社としては経験が無いと思うので、現地の公認会計士に早めに相談しましょう。またIT周りの準備はとにかく前倒しで最優先で進めます。入社時点でメールアドレスや社内システムの利用などをマニュアルも含めて準備する必要が出てきます。営業職はメールアドレス、電話番号、名刺が無いとそもそも活動できません。経費精算やSFAなども早めに関係部署と調整してアクセスできるようにしておきましょう。
またシニアの人を採用する場合は、当然即戦力として採用していると思うので、入社時に入社後30/60/90日でどのような活動をするか、仮説で良いので準備してもらい、それをベースに入社後のやるべきことをディスカッションするのが良いかと思います。

Rousham House & Gardens