2018年11月18日日曜日

パートナーを探す(1)業務委託


「知見が乏しい海外のマーケットで事業を拡大するにはパートナーの存在が欠かせない」とよく言われますが、「パートナー」にも色々な種類があります。緩やかな技術パートナー(アライアンス)、販売代理店、OEM事業者等々。広義では拠点の一部業務の委託先も「パートナー」と呼ぶこともあります。まずは業務委託先探しに関しての私の経験をお話します。私の場合は以下の業務に関して、内製と委託を組み合わせながら事業運営しています(いました)。

1.       会計・税務
2.       労務
3.       営業マーケティング

12に関しては、英国で日本企業向けのサービスを提供しているところに委託しています。本来的には英国ローカルの事業者に頼んだ方が安く済むのかもしれませんが、この2つはかなり込み入った話になるケースもあり、その場合のディテールを会話上で日本語が望ましいと判断しました。特にこの2つは本社スタッフ部門の方が私より会話する機会が多いのですが、英国ビジネスの事情に精通して、英語もディテールを会話できるレベルのスタッフを抱えている会社は一般的には相当少ないという現実的な問題を考慮しても、日本人の委託先を探すのが妥当ではないかと思います。

ただ話を聞くと、割と悪質な日本企業ターゲットの事業者というのも、残念ながら存在するようなので、信用できる方からの紹介が良いかと思います。私の場合は、現地ビジネスに根を下ろしている日本人経営者の方に直接教えてもらいました。

3に関しては、リスクヘッジのため当初は業務委託先を探して委託しました。これもネットなどで探すのではなく、英国大使館や英国政府機関などから伝手を辿って行き着いた数社を入札して決めました。1年ほど委託してみて、これにはメリットデメリットがあったと思っています。簡単に言うと、

メリット
  • 人材採用コスト(時間を含めて)を下げられた
  • 委託事業者の持つ現地企業とのコネを利用できた

デメリット
  • 長期的には社員を採用するより割高
  • 営業活動を通じたノウハウを内部に蓄積するのが厳しかった
  • 委託業者が自社製品の知識を持っているわけではなく、正しい価値訴求ができるようになるまで時間が掛かった
  • KPI設定を誤ると委託先が迷走する(社員のように考えてくれることは期待しない方が良い)
  • 委託業者の中でキーマンが辞めた組織混乱の影響をこちらも受けてしまった(これは採用した社員が辞めても同じかとは思いますが…)


特にノウハウの部分が非常に大事で、外部の事業者は(契約切られるのを恐れてか)蓄積したノウハウの詳細を開示・文書化するのを渋る傾向があります。例えば、コンタクト数をこなすテレマーケティングなどを安く外注して、クロージングは自社社員でといった役割分担でノウハウも蓄積した方が有効ではないかと、今では思っています。KPI設定は私も試行錯誤でしたので、慎重に考え、シンプルな数値に設計しましょう。

Claremont Landscape Garden

2018年11月10日土曜日

リージョン間の交流


今回は少し余談です。英国での事業立ち上げのために赴任してから、これまで成功した決断と、それ以上に失敗した決断も無数にあったのですが、最も成功したと思っているのが、欧州事業を北米事業の(バーチャルで)下に付けるという決断でした。これによって何が起きたかというと、組織的にワンチームになったため、営業・エンジニアの交流が恐ろしいぐらいのスピードで進みだしました。お互い英語ネイティブなので、日本‐その他リージョンでの交流のような、ともすれば言語の壁から来る、コミュニケーションの壁もありません。チームの仲間が増えることは感情面でもチームにプラスになるので、リージョン間での組織的・心理的な壁が無くなることで、「どうすればサポートできるか」を皆考えるようにマインドセットも変わってきました。私をいちいち通さなくても日々どんどん議論が進んでゆくので、チーム力も勝手に上がって行きます。これはかなり驚きであると伴に嬉しい誤算でした。

丁度英国社員が入社してほどなく、チームアップのための「欧米の」オールハンズミーティングをやったのですが、これがまたタイミングよく情報交換が更に深まったため、大きくプラスに働きました。英米は言語もビジネスの考え方も近いので、交流によるチーム力向上を非常に楽しく見守ることができるようになりました。営業もエンジニアも、ユースケースや技術情報の交換により、思いの外、早期に立ち上がってくれたため、これは絶対的にお勧めできます。例えば、イギリスの優れた要素技術を持つベンチャーをアメリカ側に紹介したりといったことも、日々のコミュニケーションの中で気軽に出てきます。

リージョン同士の再編は大きい組織では簡単ではないですが、情報交流を促進するための仕組作りは、どのような規模の組織でもできます。SkypeSlackなど、コミュニケーションを促進するツールには今日事欠きません。最終的にはそれでビジネスが前進することが一番だと思います。企業が成長するためには製品力も不可欠ですが、人のダイナミズムがこれだけ影響するというのを目の当たりにしたのは、人生の中でも大きな喜びでした。(実はこのリージョンをくっつける重大な決断を30秒で決めたということはさておき…)

Winkworth Arboretum