2018年9月22日土曜日

現地スタッフを採用する(2)


前回のブログでの、エージェントとのコミュニケーションに関して、書き忘れたことを捕捉します。

多くのケースで採用担当者は、始めはその国の採用慣行に関して、詳細に知らないケースが多いと思いますので、人材エージェントはそのような重要な情報を知っている重要なソースになります。日本の採用慣行は他の国とは違うという認識の元、積極的に情報をもらいましょう。例えば、想定している職種やランクの人の一般的な給与水準、給与のベースとボーナス(コミッション)比率、その他のコスト(年金等)など。

またエージェントには、事前にボーナス(コミッション)の考え方を提示しておくことが、営業職採用の場合は特に重要になります。Job Descriptionと一緒に、報酬の考え方はエージェントに提示し、現地の慣行上おかしければ、エージェントに指摘してもらうなどして、ブラッシュアップしましょう。また給与以外の福利厚生もある程度、提示しておく必要があります。有給休暇日数、年金、労災保険など、日本とは当然現地の事情は異なるので、面接のプロセス(面接が何回、どのような役職の人と面接するか)を定義したら、候補者のCVを送ってもらい、面接のプロセスに入ります。社内でもどの人がどのような観点で面接するかは事前に役割分担をしておいて、抜け漏れが無いようにしましょう。営業職の場合は、対価に見合う成果を出してもらう必要があるので、簡単なビジネスプランを作ってもらい、それをベースに面接すると良いかと思います。

また、純粋なローカル候補者は日本の会社との接点が少ない人が多いと思います。過去に接点が無いまでも、自分の会社の価値観やビジョンは伝え、共感できるかどうかも率直に聞いておきましょう。単にスキルだけだとカルチャーギャップからすぐ辞めるケースも出てきます。案外、その人の趣味とかへの質問から、その人が仕事において何を大事にしているかも見えてきます。

面接も最終段階まで来たら、候補者の現職・前職の人へのリファレンスは必ずとりましょう。英国の場合は、最低2人、そのうち1人は現職の直属の上司からのリファレンスを雇用の条件にするところが多いです。日本の感覚だと違和感がありますが、それだけ「履歴書を盛る」人が多い裏返しかもしれません。リファレンスは現職・前職でのコンプライアンス違反の有無から、職場でのパフォーマンスまでダイレクトに聞くのが一般的だそうです。例えば「あなたの部下が私の会社のインタビューを受けていて、オファーを出すつもりなんだけど、彼/彼女に関して、話を聞かせてほしい」と、なかなか日本では想像がつかない会話が展開されますが、直近直属の上司がその候補者のことを最もよく分かっているので、良い制度だと私は思います。

Lyon

2018年9月8日土曜日

現地スタッフを採用する(1)

その拠点の戦略にも依りますが、駐在員だけでは開拓できるマーケットが限られるため、いずれ現地スタッフ採用の必要が出てくるところが大半かと思います。拠点設立の承認あるいは年度末のタイミングなどには、拠点での人材計画を立てて、それに基づいて採用を進めて行きます。
まず考える必要があるのは、ここで日本語が喋れる人材を採用するかどうかです。どこに国にも日本語ができる or 日本企業で働いた経験のある人材はいますし、そこに特化した人材エージェントもいるので、「スキルに拘らなければ」比較的採用しやすいのが実情です。駐在員はともかく、グローバル化を目指し始めたばかりの企業の日本本社で、英語でローカル人材と細かいレベルでコミュニケーションが取れる人材がいるケースは極めて稀だと思います。そのような状態では日本語ができることが重視されがちですが、それによって肝心の戦略を実現するのに必要なスキルが無いのでは本末転倒になります。特に海外事業は早期に黒字化するためにも時間との戦いになるので、スキルが足りないローカル人材を雇った場合にOJTで育てている時間もありません。ローカル人材と本社のコミュニケーションギャップを埋めるためには、駐在員が(いれば)副次的な作業はサポートして、ローカル人材には戦略の実行に全力でリソースを割いてもらう覚悟も必要です。
日本ほど事情の分からないマーケットでは、良い人材エージェントを選ぶことが死活問題になります。私もイギリスで人材採用をすることになって初めて知りましたが、欧米ではLinkedInから候補者を見つけてきて、雇用者に紹介するところに特化したエージェントも出てきています。昔のように、大手の人材エージェントが候補者のプールを抱えて規模の優位性を活かす状態が崩れつつあるわけです。そのような時代にあって人材エージェントに求められる要件は、規模ではなく、「披雇用者の必要とする人材像を正確に理解していること」ということになります。逆に披雇用者としては、人材像を正確に定義し、それを人材エージェントに伝えることが重要になります。昔のように多数のエージェントと契約して、人材の紹介を数でこなす必要はありません。正確に要件を理解してもらえるエージェント1-2社と付き合えれば十分な時代になりつつあります。例えば、私のいるIT業界では、「テクノロジー業界に強い」ことを謳っている人材エージェントは多いですが、もう少し細かいレベルで私が携わっている製品が所属する市場がどのようなもので、その結果どのような人材を必要としているかというところまで理解しているエージェントは多くありません。担当の人材エージェントにこちらの要望を正確に伝えることは勿論ですが、その人材エージェントが人材像を理解しているかは必ずチェックし、面接後は自分とエージェントの考える人材像にズレを無くすために、候補者の良い面も悪い面も面接後は必ずフィードバックを欠かさないようにしましょう。
例えば「ソフトウェア業界で営業経験20年。金融大手とのディールも多数」みたいな紹介のされ方が一番「ヤバい」パターンです。「ソフトウェア業界」と言っても千差万別ですし、少なくとも自分のいる業界と同じか近い業界の経験が無いと、製品の特性を理解するのに入社してから苦労することになります。人材エージェントも要件を理解していないことを示唆しています。人材エージェントに勉強してもらうためにも、候補者だけでなくエージェントとの継続的なコミュニケーションは欠かせません。その観点からも、付き合えるエージェントの数は絞った方が良いと思います。


Cheltenham