2018年8月23日木曜日

ビザを考える

現地に拠点を立ち上げる場合、直接拠点を立ち上げてくれる現地人材がいれば申し分ないですが、そうならないケースがほとんどで、本社の人がしばらく立ち上げをやることになります。その際にその国のどのビザを取得するかを考えることは、地味に非常に重要で、後々まで影響します。このビザは法人形態にも影響します。国によっては法人形態(現地子会社、駐在員事務所他)によって取得できるビザの種類が変わってくるケースもあります。
たいていビザの情報は、その国の移民関係官庁のページに詳しく記載されていますが、詳細な提出書類などのディテールは、その国の移民法に詳しい弁護士の協力が必須となります。どこの国にも日本語サポートができる弁護士はいますが、英語のディテール解釈に自信が無い場合は、そのような窓口がある弁護士事務所を探しましょう。ここを間違うとネガティブなインパクトが大なので、支出は惜しむべきではありません。仕業はどこの国でも横の繋がりがあるようで、私の場合は英国公認会計士に、移民法に詳しい方を紹介して頂きました。
どこの国にも、会社をゼロから立ち上げる起業家ビザはありますが、例えば、英国の場合は、海外親会社から英国子会社に派遣されるビザもありますし、海外本社がある会社の英国拠点立上げのために付与される特別なビザ(Representative of an oversea business)もあります。その国によっては該当しそうなビザが複数出てくる可能性があるので、以下のようなところも注意しつつ申請を進める必要があります。

  1. そのビザを発行する要件(家族同伴の場合は、家族も含めて)。一番注意が必要なのは、派遣元の企業での就業期間が要件に入っている場合です。例えば、海外拠点立上げのために入社した人が、よくよく確認したら、就業期間の要件(イギリスの場合は、海外企業からの派遣の場合、「12ヶ月」という要件があったりします)を満たしていないため、全てが水泡に帰する羽目になったということもあり得るので、特に注意が必要です。次に重要なのは、語学テストや健康診断などが、申請の要件に入っている場合は、そのリードタイムの確認が必要です。
  2. ビザの期間と、更新の要件。派遣される人がキーになるマネジメントの場合は、全ての戦略に影響してくるので特に注意が必要です。
  3. そのビザで検討している子会社や駐在員事務所が立上げ可能か。
  4. ビザは拠点を登記する前でも発行可能か、登記が先か。登記、ビザ申請のリードタイムを鑑みてどのタイミングで申請するのがベストか。
  5. ビザ申請前にその国に(出張等で)入国できるタイミングはいつまでか(越えてしまうと、ビザ申請が遅れます)
  6. 起業家ビザの場合、資本金や雇用する従業員数などで要件はあるか


移民法弁護士や、現地の投資促進機関(例えば英国だと、Department for International Trade)等には早めに連絡を取って、アドバイスを受けましょう。


Town Musicians of Bremen

2018年8月14日火曜日

味方を増やす

どのようなプロジェクトでもそうですが、社内にはグローバル化に反対する人は必ずいます。グローバル化そのものはトップの号令で始まるケースが多いですが、そのようなスポンサーとしてのトップ層だけではなく、グローバル化するに当たってキーになる部門の協力は不可欠になります。例えば、拠点立上げ当初に本社のリソースに頼らなければならない場合、以下のような部門が関わってきます。
1.    製品開発部門、プロダクトマネージャ: 製品、マニュアル等の多言語対応、海外向け製品ロードマップ作成
2.    サポート部門: サポートサービスの多言語対応、拠点との時差を考慮したサポート体制の構築(例: 24H英語サポート)、代理店向け技術トレーニング
3.    マーケティング部門: マーケティングコンテンツの多言語対応、ウェブサイト多言語対応、海外マーケットでのフィールドマーケティング、デジタルマーケティング、マーケティングオートメーションの体制構築
4.    財務部門: 海外での法人口座開設、経費精算など諸々
5.    人事部門: 海外人材採用や労務管理等
6.    法務部門: 海外顧客向け契約・規約の整備(各国ごと)、代理店契約等整備、個人情報保護体制と関連文書の整備等
7.    経営企画・総務部門: 海外進出のための各種決議事項の摺合せ
などなど、社内のほとんど全ての部門が関わってきます。
ただ実際には、「社長が言っているから」という理由でやらされ感でやっている人も少なからずいます。また心理的にはグローバル化を応援していますが、いざとなると腰が引ける、足が動かないといった人もいます。実際に海外に赴いて本社から離れてしまうと、本社とのコミュニケーションの密度は確実に落ちます。協力が必要な部門には、事業計画の説明など地道にやって味方を増やしておきましょう。
また社外の味方を増やしておくことも重要です。例えば、日本国内のパートナーで、進出先の国に拠点を持っている会社とは、日本でのパートナーシップをそのまま活用することができるので、進出先の拠点を紹介してもらうなど、積極的に関係を発展させることが重要になります。可能なら、日本国内の顧客の海外拠点を紹介してもらうということも検討しましょう。「味方を増やす」というよりは「海外進出していることを知ってもらう」という話ですが、海外に拠点を出して顧客・パートナーのサポートを強化することはポジティブな情報なので、より多くの人に知ってもらうことは決してマイナスにはなりません。


Chipping Campden