2018年10月6日土曜日

現地スタッフを採用する(3)


私の場合、最終面接も終わってめでたく第一号現地社員採用となったところで慌てて作って大混乱だったのが、オファーレターを含む提示書類一式でした。イギリスの場合、以下の一式の準備をしました。
1.      オファーレター
2.      雇用契約書
3.      コミッション・ボーナスの計算式に関するレター(雇用契約書の補足的な内容)
4.      個人情報の取扱いに関する同意書(Privacy Notice
5.      Staff Handbook(披雇用者としての行動規範)
6.      Job Description(披雇用者の職務定義)
5は別として、そもそも会社としてその国の現地社員を採用する段では、全てが初めてのことだと思います。人事・労務関連に詳しい現地の弁護士やコンサルタントは、採用活動前に必ず見つけておきましょう。後から探してオファーを出すのに時間ばかり掛かると、折角見つけた人材に逃げられるリスクが出てきます。当然のことながら、最終面接まで残るような優秀な人は、雇用者側がきちんと書類含めて受け入れる体制を持っているかも、判断材料として見ていると考えるのが自然です。
1から5の書類は現地の習慣的に大体テンプレートがあって、それに自社のルールを適用して修正するのが速いと思います。特に時間が掛かるのが、ボリュームが大きい245ですが、2は候補者との交渉の過程で手を入れるのに時間が掛かるケースもあります。採用を始める時点で、これらのテンプレートは作成に着手するのが妥当です。
私の場合は、これらを最終面接近くになって着手したので、人事や法務に相当迷惑を掛ける羽目になりました。結局、そのオファーを出そうとした第一号の人は、条件面で散々ゴネられ、最終的にオファーを蹴られたのですが、ゴネられている間に、時間の掛かる45を仕上げる時間の余裕が生まれ、次の候補者にはスムーズにオファーを提示できたというケガの功名もありました。しかも、その最初にゴネた人は、後日談で履歴書をかなり盛っていて、採用しないで良かったというオチも付いた次第です。
英国は日本と労務関係の制度・習慣は近いとは思いますが、それでも細部には違いがあります。例えば、
  • ロンドンは不動産が高過ぎて住めないため、シェアードオフィスが日本と比べてかなり普及しています。普段は自宅勤務、連絡手段は電話やスカイプのようなウェブ会議システム、どうしてもFaceToFaceが必要な場合だけロンドンに出てくるという人が大半なので、面接時に「週に何回出勤必要か?」と聞かれた時は日本の感覚との違いに驚きました。
  • 通勤に掛かる費用も給料込みという考え方なので、自腹が基本。逆に通勤費を支給することをメリットとしてアピールしている日系企業もあります
  • 定期昇給という考え方が無く、給料(基本給)が上がるのは、Job Descriptionに項目が追加された時(つまりやることが増えた時・レベルアップした時)だけという考え方

以上のように、細かいところは現地のプロでないと事前に知ることは困難なので、人材エージェントもある程度情報を持っていますが、労務系のプロは非常に重宝します。
めでたく雇用契約書にサインをもらい、入社日も調整できたら、労務回りのところを色々準備する必要が出てきます。現地の規制に合わせた給与計算などの準備は、採用が決まった時点で財務などとの調整が必要ですが、現地の給与計算もほぼ全てのケースで、会社としては経験が無いと思うので、現地の公認会計士に早めに相談しましょう。またIT周りの準備はとにかく前倒しで最優先で進めます。入社時点でメールアドレスや社内システムの利用などをマニュアルも含めて準備する必要が出てきます。営業職はメールアドレス、電話番号、名刺が無いとそもそも活動できません。経費精算やSFAなども早めに関係部署と調整してアクセスできるようにしておきましょう。
またシニアの人を採用する場合は、当然即戦力として採用していると思うので、入社時に入社後30/60/90日でどのような活動をするか、仮説で良いので準備してもらい、それをベースに入社後のやるべきことをディスカッションするのが良いかと思います。

Rousham House & Gardens

0 件のコメント:

コメントを投稿