2018年7月14日土曜日

Feasibility Study(1)

この項目は今後何回かに分けて書くことになります。なぜなら会社にとって最低でも数億円単位の投資になる重要な話だからです。Feasibility Study(実行可能性調査、フィジビリティスタディ、F/S)とは様々なプロジェクトの実現可能性を事前に調査することで、海外事業の立上げでも、その投資判断として海外進出前に必要になってきます。
私はF/Sに約2年弱費やしました。私の人件費、出張経費等含めてもこれ自体、1千万円を超える投資になりますが、失敗すると数億円の負債になることを考えると決して疎かにしてはいけません。英国で幅広い会社を見ている公認会計士が「Feasibility Studyを疎かにしたまま進出して痛い目に合う企業が多い」というお話をされていました。事業内容として、「現地の市場調査」を目的として設立される現地法人もあります。これは様々な意味を含んでいますが、「法人を設立してF/Sを長期継続する」ということも当然含まれてきます。それぐらいF/Sは重要であり、時間の掛かることなのです。
当然のことながらF/Sの結果、「国内市場に専念する」という結論もあり得る選択肢です。「そんなこと言っても今年度末までに海外進出すると株主に説明してしまったんだ。何とかしろ」という経営陣がいたら、きちんとリスク含めてディスカッションしましょう。前回のブログでも書いたように、グリーンフィールド投資だけが海外投資ではありません。
さて、具体的にはF/Sに関して、定型のテンプレートは無く、様々なリサーチの集合体です。私の場合は、B2Bソフトウェアを事業として扱っていたので、F/Sの目的は突き詰めると、以下のような問いを明らかにすることでした。
1.      自社のソフトウェアが受け入れられる市場(業界、顧客、具体的なPain Point)があるか?自社製品の機能が足りない場合、新しい機能を開発、あるいは他社の技術を取込むことで解決可能か?
2.      受け入れられる市場はターゲットとしている市場の特定地域か?例えば欧州だと国によって言語が異なるため、その言語に対応できているかどうかで地域が限定されます。
3.      その市場は投資するに見合う規模か?採算が取れるか?
4.      その市場にリーチする販路は何か(直販、代理店等)?その市場にリーチするために必要な人材像、組織体制は?
5.      競合は何か、自社は競合に対して優位性を持っているか。その優位性は上記Pain Pointに響くものか?
上記の問いに答えて行くために、最初はPESTPolitics, Economy, Society, Technology)分析のようなマクロ分析から始めて、3C分析(Customer, Company, Competitor)など詳細にブレークダウンして行くことになります。漫然と分析を開始してしまうと、幅広過ぎて、収集が付かなくなってしまうので、「顧客のPain Point」を第一のプライオリティに置いて、仮説を立て、その仮説に基づいてPEST分析、3C分析などを進めて行く必要があります。PEST分析に必要なマクロ情報はとっかかりとして、ジェトロのサイト(https://www.jetro.go.jp/)には各国のレポートやマクロ統計情報が載っているので役に立ちます。またターゲットとしている国の駐日大使館、やジェトロの現地事務所にコンタクトして直接情報を仕入れることも有効です。

Kiftsgate Court Gardens

続く

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